10億ドルのスパイ、名はトルカチェフ

最高機密エージェント: CIAモスクワ諜報戦




タイトル 「最高機密エージェント、CIAモスクワ諜報戦」


(著)デイヴィッド・E・ホフマン
(出版)原書房


陸軍中野学校出身のスパイ然り、ドイツが生んだ怪物暗号機エニグマ然り、スパイ活動を含む情報戦が第二次世界大戦において勝敗に大きく影響を及ぼしたのは誰もが認めることだと思います。


しかし、世界大戦が終結したあともアメリカと旧ソヴィエトが一触即発の状況にあった時期があります。冷戦期です。


あからさまな戦闘こそなかったものの、水面下では少しでも敵国よりも優位に立とうと激烈な戦いが巻き起こっていました。その戦いこそがスパイを駆使した諜報戦であり、その中心人物がこの本の主人公であるCIAモスクワエージェント、アドルフ・トルカチェフです。


もともとトルカチェフは旧ソヴィエトの人間でありながら、共産主義に基づいた思想に対して反対の立場にありました。祖国や家族のためにソ連の共産主義システムを根本から変えるために、アメリカ大使館職員と接触、モスクワでスパイ活動を開始したのでした。


当初CIAはトルカチェフの接近をKGBの罠と考えていました。しかし1年に及ぶトルカチェフのアプローチが職員の認識を変え、やがてCIA本部のトルカチェフの起用を認められたのでした。


トルカチェフがもたらす情報の質と量は、それまでの諜報戦の成果と比べるまでもなく高いものでした。ソ連で技術者として勤務し、設計図に直接アクセスできるポジションにトルカチェフはいたのです。


レーダーや戦闘機に関する情報、はたまた10年分のソ連軍事計画表といった「最高機密」を盗み出されたソ連はもはや筒抜け状態でした。トルカチェフは、推定10億ドル以上の機密的価値、およびソ連対策の軍事経費の削減を実現させたと当時のアメリカ高官は語っています。


しかし、冷戦が終結しかけていた時期にトルカチェフはソ連にバレて逮捕、ペルソナ・ノン・グラータとして死刑を宣告されました。皮肉にもトルカチェフの素性がバレてしまった原因は、元CIA職員によるものでした。


彼の死後、トルカチェフの功績をたたえるために彼の絵をCIAの建物の中に飾られるようになったそうです。


この本の魅力はもちろんトルカチェフの諜報員としての活動内容にありますが、他にも米露両国のスパイ活動のかなり具体的な方法にも触れられています。


CIAがスパイをどうやっても送り込めなかった場所にどうやって諜報員を潜伏させることに成功したのか、いかにしてスパイを撒くのか、見張りの見つけ方、変装や当時の最新技術を駆使したスパイ道具などなど、読んでいるだけでワクワクするような内容が書かれていて、読んでいて全く飽きない内容です。


これはオススメです。
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テーマ : こんな本を読んだ
ジャンル : 本・雑誌

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くりーぴーホワイト

Author:くりーぴーホワイト
外資系企業に就職したものの、上司の英語が全く理解できないため、英語吹き替えアニメで英語学習する方法を発案して実行中。読書メモも兼ねてなるべく頻繁に更新するよう努めている今日この頃。

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