「生物ピラミッド」という概念を揺るがしにかかる植物本

植物は<知性>をもっている 20の感覚で思考する生命システム




タイトル 「植物は知性を持っている」

ステファノ・マングーソ+アレッサンドラ・ヴィオラ (著)
久保耕司 (訳)
NHK出版


ここ数百年における目覚ましい植物研究によって新たな事実が次々と発見されています。


その衝撃的な発見によってこの本の著者はある結論に達しました。それがこの本のタイトルにもなっている「植物は知性を持っている」ということです。



植物は人間のように五感を持っていないと以前までは考えられていましたが、今日その認識はくつがえされ、植物は五感のほかに少なくとも15の感覚があることが分かってきました。そしてそれをもとに、植物も人間と同じく音を聞き、他の植物や生き物と意思疎通をおこなって迫りくる危険を察知、警告をしたり、繁殖することが分かってきています。


この「問題を解決する能力」を知性と定義する場合、植物の知性を持っているどころか、知性を持つことを専売特許と考えている人間をはるかに超えているというのです。


ではなぜ今まで、植物に知性というものが存在するという事が発見できなかったのかと言うと、人間と植物の構造が根本的に異なるからだと著者は語ります。


人間を含む動物は動き回る場合において、動くさいに必要になる器官は一か所に集める方が効率的であるという事で、脳や目、耳などの器官が集約されています。


対して動かない植物は、重要な器官を一か所に集めるリスクが動く動物と比べて圧倒的に高いので、器官を分散させることにより「どの部分を失っても決定的な損失にならない」ように進化しました。これは植物の「モジュール構造」と呼ばれています。


よって植物の目や耳、脳の役割をするネットワークは体全体にあるという発想が近代までは思いつかず、その構造の根本的違いにより植物には知性があるという結論に至らなかったというのが理由の一つです。


また、この本はダーウィンやリンネといった歴史的な植物学者についてのエピソードについても言及されています。


印象に残ったのは、ハエトリグサという食虫植物の虫を捕まえる行為のリンネの見解です。


「植物が虫を捕まえて食べている」と主張する植物学者がいる中、リンネは「ハエトリグサは虫を捕食するために葉を閉じるわけでない」「虫も出ようと思えば出られるがわざと出ない」や「虫は自殺しようとしてそこにとどまっている」など、植物が虫を捕食している事実を認めようとしませず、周りの植物学者も当時すでに著名だったリンネに同調しました。


これは当時「植物は食物連鎖の底辺」と信じられていたことで、リンネもその認識に囚われており、「そんな生態系を逆転するような事が起こるわけがない」という考えによりかたくなに食虫植物の存在を認めようとしなかったのです。


今日では食虫植物の捕食行為の証拠だけでなく、知性が云々というレベルまで研究が進んでいますが、つい100年前まで上記の認識が行きわたっていたことを考えると、科学の進歩の目覚ましさと、革新的な発見を世に発信するたびに世間から冷ややかな目で見られたであろう学者たちの影が想像できて歴史の厚みを感じます。


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ジャンル : 本・雑誌

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くりーぴーホワイト

Author:くりーぴーホワイト
外資系企業に就職したものの、上司の英語が全く理解できないため、英語吹き替えアニメで英語学習する方法を発案して実行中。読書メモも兼ねてなるべく頻繁に更新するよう努めている今日この頃。

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