ルネサンス時代の「芸術家の生活文化」に焦点を当てた一冊

タイトル 「ルネサンス芸術工房」

ブルース コール (著)
越川 倫明 (翻訳)
諸川 春樹 (翻訳)


これはルネサンス時代の芸術作品の紹介…ではなく題名にもある通り工房の中、すなわち芸術家やその文化にフォーカスした物です。


非凡な才能を用いて作品を生む人物が芸術家だと我々はイメージしがちですが、ルネサンスの芸術家は経験と技術に裏打ちされた職人であり技術者でした。


雇い主がいて、その要望を聞き、値段の交渉を行い、材料を自分たちで調達して、1つの作品を数人で分業して完成させていくスタイルが当時のやり方です。


弟子の期間に画材の作製、住む土地に合った作風などを徹底的に教え込まれる点を見ても他の分野の職人と変わらず、入門する弟子の動機は、親の要望や親戚のツテなど、才能は二の次だったそうです。


よって、芸術は画家のセンスありきでなく、仕事があって成立というのが16世紀の終わり頃まで続いたとか。


ルネサンス芸術家の制作過程を読んでいくうちに似てるなと思ったのが、現在のアニメーション業界です。原画、彩色、動画、仕上げなど細かく分野を分けて製作されているアニメは、一つの作品を大勢で取りかかって製作するという点で似ている部分があると思います。


ルネサンス時代の絵画や彫刻を作っている当人たちにとっては芸術という認識が薄かった点についても、今でこそ国内外で高い評価なされているアニメですが、あくまで職業としてアニメ製作をしている点では似通っていると思います。


後年になってルネサンス芸術に称賛の目が向けられた際、おそらく親方を中心に称賛されたことでしょう。アニメがヒットした場合は監督が中心に称されるというようなイメージがありますが、製作に携わった人たち全員にも同じように褒めてほしかったというのが製作に携わった方々の本音なのではないでしょうか。(笑)


ところで、低賃金長時間労働が問題となっているアニメ業界ですが、どうしてそんな状況になったのでしょうか。


これは私個人の考えですが、ルネサンス芸術家はギルドや工房に属することで、決して裕福な生活は送れなかったとしても、最低限の賃金は保障されていたのではないでしょうか。


対して、現在のアニメ業界は従業員は個人事業主としてみなされ、仕事を仕上げた分だけの賃金しか与えられないと聞いたことがあります。


さらに当時の芸術家は幅広い分野に携わっていたのに対し、分業化することで効率が飛躍的に上がっているアニメ業界は、一つ一つの単価が下がったことでアニメーターは数をこなさなければない状況になったのだと思います。


また、供給過多の感が否めないとささやかれがちな現状も手伝っているのかもしれません。


業界全体を打開できるようなアイデアを持ち合わせていませんが、アニメ制作にかかわっている方々は、その分野で培った知識や技術を、まったく畑違いな領域で活かすことができれば興味深い展開になるのではないでしょうか。


それができれば苦労はないんでしょうけれどね。
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テーマ : アート
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

くりーぴーホワイト

Author:くりーぴーホワイト
外資系企業に就職したものの、上司の英語が全く理解できないため、英語吹き替えアニメで英語学習する方法を発案して実行中。読書メモも兼ねてなるべく頻繁に更新するよう努めている今日この頃。

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