シモ・ヘイへ:冬戦争に出現した「白い死神」

白い死神 (アルファポリス文庫)



タイトル 「白い死神」
ペトリ サルヤネン (著)
古市 真由美 (訳)
アルファポリス


第二次世界大戦において、ロシアとフィンランドの間で勃発したいわゆる「冬戦争」でロシアの前に立ちはだかった一人の兵士がいました。


その兵士こそ本書の主人公であるシモ・ヘイへ(シモ・ハユハ)であり、白い死神と恐れられたスナイパーです。


彼は20歳の時に兵役義務で軍隊に加入しましたが、その時すでに狩りで鍛えた射撃の腕前は卓越しており、数々の大会で優勝、トロフィーを獲得したそうです。


兵役についた時に「冬戦争」に突入し、そして彼の能力はすぐに自国に限らず、リュッシャ(ロシア人)にも脅威として知れ渡ることとなりました。


シモ・ヘイへは152cmと小柄ながら、120cmの小銃を駆使して戦い、彼の公認確認戦果は542人と世界最多で、この記録の中には小銃以外の火器による記録は含まれていないので、実際はこれを上回る戦果を残したという事になります。


彼の強さは狩猟で養われたと本書では書かれています。気温が-20℃から-40℃まで下がるフィンランドにおいて何時間も標的を待ち構え、スコープを使用せず照準のみで狙いを定められる集中力は、幼少期から教え込まれた狩猟からの影響を強く受けていて、シモ・ヘイへがこういった過酷な環境でどのように自身を適応させていったかというテクニカルな内容も言及されていて面白いです。


しかし、彼は1940年の3月6日に顎を撃ち抜かれて戦線を離脱、くしくも講和条約が締結される1週間前でした。


この条約によりフィンランドの国土の10分の1がロシア領となり、シモ・ヘイへの実家もフィンランドの国境の向こう側となってしまいました。


「冬戦争」の功績が認められ、シモ・ヘイへは兵長から少尉へと5階級もの特進を果たし、戦後は猟師として余生を過ごしました。


この本の中で語られるシモ・ヘイへは終始物静かで、彼は決して戦争を望むような人物ではありませんでした。彼が「冬戦争」を戦い、生き延びた原動力は「代々続く自分の村と家を守りたい」という望みであったと、彼はインタビューで言及していました。


シモ・ヘイへは、勲章よりもソ連領になった自分の家を返して欲しかったのではないでしょうか。


蛇足ですが、人間というのはどんなに危険な場所でも慣れてしまう動物のようです。将校が全線の視察に来たときにロシアの侵攻が始まったようで、機関銃や戦車の主砲が飛び交う場所で将校が右往左往しているところ、兵士の一人が何も起こってないかのように、のこぎりで丸太を切っていたそうです。


「おい、のこぎりなんぞ使ってる場合か、リュッシャ(ロシア人)がこっちを砲撃しているじゃないか」


言われた兵士はのこぎりを止め、何かを考えているようでした。


「はあ」


彼はのこぎりを置くと、今度は斧で薪を割り始めたそうです。


将校はこの光景を生涯忘れることのない光景だと追想していました。しかし、これくらい自分の神経を鈍らせないと、とても最前線で何か月も生活なんてできませんね。
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テーマ : こんな本を読んだ
ジャンル : 本・雑誌

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くりーぴーホワイト

Author:くりーぴーホワイト
外資系企業に就職したものの、上司の英語が全く理解できないため、英語吹き替えアニメで英語学習する方法を発案して実行中。読書メモも兼ねてなるべく頻繁に更新するよう努めている今日この頃。

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