声に出して読むことで脳に与える影響とは?

脳と音読 (講談社現代新書)

タイトル 「脳と音読」
川島 隆太 (著)
安達 忠夫 (著)
岩波現代新書



人類が声を出さずに書物を読むようになったのは、ほんの最近のことで、それまでは声に出して読むという事が普通だったそうな…。


この本は二人の著者から作られた、音読と黙読をすることにより脳に与える影響を教育学と脳科学の観点から迫った一冊です。


もともと英語を勉強するにあたり、「どうすれば効果的に英語を話す訓練ができるか」という事を思案していた時に見つけた新書で、音読というキーワードにピンときた次第です。



この本の前半部分は「人間がことばを学習するためには一定の時期にことばに触れなければならない」という事の説明に割り振られています。


著者は以前、親鳥にくっついて水路で泳いでいた雛鳥たちの中の一匹だけが徐々に沈んでいくことを不思議に思い、のちにそれは尻尾付近から分泌される特殊な油を羽に塗りつける習慣を親鳥から見て学ぶことが出来なかったからという事が判明したそうです。


これは水鳥が最初に見た生物を親と判定する「刷り込み」や「インプリンティング」という習性に共通していて、生まれてから一定期間の間に学ぶことができなかった場合は、その後に学び直すという事はほぼ不可能なのだそうです。


人間にもそういった「臨界期」があり、数段階に分けて脳が著しく成長し、それに合わせて言葉を習得していくようです。このプロセスを著者はアヴェロンの野生児やヘレン・ケラー女史を引き合いに出して細かに説明しています。


個人的に20歳以降の人が学習する場合についての上達度などの説明や事例が欲しかったため、その項目が無かったのは少し残念でしたが、人間の「臨界期」におけるプロセスは細かく説明され、それだけでなくそれを応用した教育の仕方も提案されていて有意義な内容でした。


自分に子供ができたら実施してみるのもいいかもしれません。


後半部分は音読と黙読がもたらす脳の影響を説明していますが、著者は音読と音読は違うプロセスを経ているという指摘をしています。


黙読は目で見字を見て、それを脳で処理をして終了しますが、音読はそこから情報を越えに変換して出力し、さらにその声を耳で受け取ります。


この事から黙読よりも音読の方が脳の活動範囲の観点からして、より物事の記憶の定着率が高くなるという事が指摘され、コレを鑑みてまずはしっかりと学ぶ言語やことばを聞いて、それから声に出してみるという事を提案しています。


言われてみれば当たり前のような話ですが、しかし実際は教育の現場ではあまり実施されていないのではないでしょうか。


高校の英語の授業を思い出してみても分かる通り、読むことが第一の前提としてカリキュラムが組み立てられています。リスニングテストの勉強もセンター試験の範囲内のためにあるにはありますが、リーディングの勉強と比べたらお粗末なもので、スピーキングに至っては実施しているのかすら怪しいくらいではないでしょうか。


「日本人の英語は低水準だ」といわれて久しいですが、それは基本でありながら脳を最大限に運用するリスニングとスピーキングのカリキュラムが十分に足りていないからだと、私たち素人目線だけでなく脳科学の観点から見ても証明されたという事なのでしょう。
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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

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くりーぴーホワイト

Author:くりーぴーホワイト
外資系企業に就職したものの、上司の英語が全く理解できないため、英語吹き替えアニメで英語学習する方法を発案して実行中。読書メモも兼ねてなるべく頻繁に更新するよう努めている今日この頃。

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